法務局から『相続登記を促す通知』が来たときの対応方法
相続登記がされていないなどの理由で、所有者が不明になっている土地が社会問題化しています。
日本の所有者不明土地の総面積は九州本島に匹敵するといわれており、政府はさまざまな法整備を進めることで所有者不明土地の解消に努めてきました。
法務局では、相続が発生してから10年以上に渡って相続登記がされていない土地所有者の法定相続人を調べ、相続登記を促すための『長期間相続登記等がされていないことの通知』を送付しています。
もし、この通知を受け取った場合、どのように対応すればいいのでしょうか。
2024年の相続登記の義務化を前に、相続登記の方法を学んでおきましょう。
法務局で法定相続人情報を確認しよう
法務局は2019年頃から所有者不明土地の解消を目的に、『長期間相続登記等がされていないことの通知』を送付しています。
通知を送付する一連の作業を『長期相続登記等未了土地解消作業』といい、『所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法』第40条に基づいて実施されています。
通知は登記名義人が亡くなっているにも関わらず、長期間に渡って相続登記を行っていない場合に送付されます。
したがって、通知を受け取った人は所有者が不明の土地の相続人であり、現在までに相続登記を行っていないことになります。
通知には相続登記が行われていない土地の情報が記載されています。
法務局で不動産に関する証明書を取得して『不動産番号及び不動産所在事項』(番号と所在地)や『法定相続人情報の作成番号』、『現在の所有権の登記名義人』に間違いがないか確認しましょう。
ちなみに、所有者不明土地の調査対象となる土地は地域が限定されており、亡くなられた方名義の土地を全て調査しているわけではありません。そのため、この通知に記載される情報だけでは相続登記が行われていないすべての不動産を把握することはできません。
また、複数の法定相続人がいる場合も、通知はそのなかの任意の一人に送付されます。
では、この通知を受け取ったら、どうすればよいのでしょうか。
いずれにしても、通知が来たということは相続登記を行っていないことになるため、通知を受け取った人は、相続登記申請に向けて動く必要があります。
2024年4月1日からは相続登記が義務化され、罰則もありますので、放置しないようにしましょう。
通知を受け取ったら、最初に『法定相続人情報を出力した書面』を入手します。
この書面は相続関係を一覧した図となっており、相続登記申請において相続が発生したことを証明する情報として使えます。
ちなみに、令和4年10月3日までは、土地を管轄する法務局での閲覧(戸籍等を含む)のみ認められていました。
現在では最寄りの法務局で、通知と本人確認書類、書面の提供依頼書に必要事項を記入して提出すると、相続関係を一覧化した図のみ出力した書面が無料で提供してもらえます。
書面の提供依頼は、親族や資格者代理人に委任することも可能です。
その場合は、委任状のほか、代理人の氏名・住所を確認することができる公的書類(資格者代理人の場合は資格者代理人団体所定の身分証明書)、依頼人の本人確認書類の写しなどが必要になります。
また、郵送での申し込み・受け取りも可能です。
その場合は、法定相続人情報を出力した書面の提供依頼書に郵送を希望する旨を書き添え、必要書類と返信用の封筒と切手を同封して送付しましょう。
なお、返信方法は書留郵便など受取確認ができる方法に限り利用できます。
『法定相続人情報を出力した書面』と似たような名称で間違えやすいものに、『法定相続情報』があります。
『法定相続人情報を出力した書面』とは、被相続人の死亡後から現在の法定相続人までの相続関係を法務局が調査したもので、その情報に基づき作成されます。
一方、『法定相続情報』とは、被相続人の死亡時の法定相続人に関する相続関係を証明するものです。
相続人自身が相続関係を調査したうえで、法務局に戸籍と自身が作成した一覧図を提出し、法務局に証明してもらいます。
なお、既に死亡した法定相続人の名前を、この一覧に載せることはできません。
名称が似ているため混同しないように注意しましょう。
共同相続人と遺産分割協議を行うのが望ましい
法務局から提供された、法定相続人情報を出力した書面は、法務局の調査の結果明らかになった土地の相続関係を一覧化したものです。
通常、相続登記を行うには、相続が開始したことや、被相続人が誰なのかなどを証明する必要があります。
そのため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍、住民票の除票などに加え、法定相続人全員の戸籍謄本や住民票などを提出しなければなりません。
戸籍関係書類の収集は非常に手間がかかるため、相続登記が進まない原因の一つとなっています。
しかし、法定相続人情報を出力した書面は、相続関係を法務局が代わりに調査してくれ、かつその内容が正しいと証明するものです。
そのため、戸籍関係書類の収集を省略することができます。
さて、共同相続人が明らかになったら、そのまま法定相続分どおりに共同で相続登記を行うこともできます。
しかし、後に不動産の家賃や売却、固定資産税などの問題でトラブルに発展する可能性があるため、一般的には、共同相続人で遺産分割協議を行い、共同相続人の一部の人が土地を相続するのが望ましいとされています。
遺産分割協議を負担に感じるかもしれませんが、そのまま土地を放置しておくとますます相続人が増え、手続きが複雑になってしまいます。
前述したように、長期間相続登記等がされていないことの通知がある場合は、通常の手続きよりも大幅に手間を省くことができます。
通知を受け取ったら、むしろよいタイミングだと考え、相続登記の手続きを行いましょう。
※本記事の記載内容は、2023年5月現在の法令・情報等に基づいています。
電話でのお問い合わせは0120-777-515